住宅やビルなどの建物を建てる際に行う行事が地鎮祭です。

聞いたことはあるものの、「どのような目的で行うものなのか」「具体的にどのようなことを行うのか」「服装はどうすればいい?」「かかる費用は?」「挨拶ってどうするの?」などなど、ご存じのない方も多いのではないでしょうか。

ここでは、地鎮祭を初めて行う方向けに、地鎮祭の目的、行うこと、用意するもの、服装、注意点などを解説していきます。

地鎮祭とは

地鎮祭(「じちんさい」あるいは「とこしづめのまつり」と読む)とは、新しく住宅やビル、オフィス、工場、店舗などの建物を建てる際に行う行事のことです。

綺麗にならされた土地に、4本の青竹が立てられ、そこにしめ縄が張られているーー このような光景を見かたけたことはありませんか? あれが地鎮祭です。

地鎮祭は、その土地を守っている神様(氏神様)に対して、土地を使う許可をいただくため、および工事の安全と建築物の繁栄を祈願するために行います。

地鎮祭の起源は古く、西暦690年頃(奈良時代)にはすでに地鎮祭を行っていたとの記録が残されています。

一般的に、地鎮祭を主催するのは施工業者さんです。施主の方で地鎮祭の開催を決めると、施工業者さんが、神職さんへの依頼、関係者への連絡、必要なものの準備などを行ってくれます。

この地鎮祭は、行うことが義務として決まっているわけではありません。行うか行わないかは、施工業者さんや身内の方と相談しながら判断していくことになります。

現在では、「古い習わしだから特に気にしていない」「何百年も使うことを想定していないから特に大げさにすることはない」「なるべく手間やお金をかけたくない」などといった理由から、地鎮祭を行わないケースも増えています。

「現地に塩をまくだけ」「工事関係者だけで略式で行う」など、簡易なスタイルで済ませるケースもあります。

また、最近は中古物件や建売物件(建ててから販売するタイプの物件)も多いため、地鎮祭を行う行わない以前に、地鎮祭の機会自体が減っている、という面もあります。

なお、地鎮祭の方式には、神式、仏教式、キリスト教式などがあり、神式で行うのが一般的です。本記事では、神式の地鎮祭について解説していきます。

地鎮祭の参加者

一般的に、地鎮祭の参加者は、住宅の場合は施主、施主の家族・親戚など、オフィスや店舗などの場合は社長、社員、取引先などです。身内以外の参加者は、神職さん、施工業者さん、設計者さん、工事関係者さんなどです。

地鎮祭において、「そこに住む人は出席しなければならない」「〇〇人以上は出席しなければならない」などといったルールはありません。

たとえば、平日に地鎮祭を行う場合、「仕事を抜け出せない」「子どもが学校を休めない」といったこともあるでしょう。遠方で地鎮祭を行う場合、「高齢者や体調不良の人に負担にかかってしまう」といったこともあるでしょう。

もちろん、参加できるのであれば参加した方がよいですが、無理をする必要はありません。参加するのは「ご夫婦のみ」「施主と都合の合う人のみ」というケースもあります。

なお、高齢者や体調不良の人などに参加してもらう際、注意したいのが、休息できるような場所がないという点です。

そこに建物があれば、座布団を敷いて座る、布団を敷いて横になるなどして、休息をとることもできますが、建物を建てる前に行う地鎮祭の場合、通常、そこに建物はありません。

地鎮祭への参加は必須ではありませんので、高齢者や体調不良の人などの場合、建物が完成してからゆっくりとした気分で来てもらってもよいでしょう。

地鎮祭の日取り

地鎮祭は、縁起のよい日を選んで行うのが一般的です。

冠婚葬祭などで使われている暦「六曜(ろくよう)」の吉日を選ぶケース、建築業界で使われている暦「十二直(じゅうにちょく)」の吉日を選ぶケース、「六曜」と「十二直」両方の吉日を選ぶケースなどがあります。

六曜における吉日
・大安(たいあん)
・友引(ともびき)
・先勝(せんしょう)

十二直における吉日
・建(たつ)
・満(みつ)
・平(たいら)
・定(さだん)
・成(なる)
・開(ひらく)

カレンダーに、六曜は載っていても十二直まで載っていることはまれです。十二直の吉日を知りたい場合は、インターネットなどで調べてください。

なお、必ずしも縁起や吉日にこだわって日取りを行う必要はありません。

もちろん、縁起や吉日を考慮できるのであれば理想的なのですが、スケジュール調整が難しいというケースもあるでしょう。

縁起や吉日にこだわるあまり、話が進まないということになれば、「参加予定者が他の予定を入れにくくなる」「着工時期が伸びてしまう」など、様々な支障が生じてきます。

経験のある施工業者さんとも相談しつつ、柔軟に調整していきましょう。

なお、地鎮祭は雨の日でも行われるケースが多いです。

雨は土地を清めるとされているため、雨の中で地鎮祭を行ったからといって、特に縁起が悪いなどといったことはありません。他の行事と比べ、地鎮祭は天候に対する心配が少ないと言えます。

ただし、台風や大雪など、あまりに天候が悪い場合は、日程をずらすケースもあります。

地鎮祭の流れ

ここで、地鎮祭の一般的な流れをご紹介していきます。

地鎮祭は古くからある伝統的な行事であるため、形式や進め方がほぼ決まっています。下記に示す流れから大きく外れることはほとんどありません。

①修祓の儀(しゅばつのぎ)

お供え物や参加者を清める儀式です。神職さんが大麻(おおぬさ)を左右に振って、お供え物や参加者のお祓いをします。参加者は起立して頭を下げておきます。

②降神(こうしん)の儀

神様を降臨させる儀式です。神職さんが「オオー」と唸るような声を出し、神様を祭壇にお迎えします。参加者は起立して頭を下げておきます。

③献饌(けんせん)

神様にお供え物を食していただく儀式です。神職さんが祭壇にあるお酒とお水の蓋を取り、お供え物を神様に差し上げます。参加者は着席したままその様子を見守ります。

④祝詞奏上(のりとそうじょう)

神様にお祈りの言葉を申し上げる儀式です。神職さんが工事の安全と家の繁栄を祈る祝詞(のりと)を読み上げます。参加者は起立して頭を下げておきます。

⑤四方祓(しほうはらい)

土地を清める儀式です。神職さんが建設工事を行う土地の四隅に、お酒、お米、お塩を撒きます。参加者は着席したままその様子を見守ります。

⑥地鎮の儀(じちんのぎ)

地鎮祭のメインイベントで、「初めてその土地に手をつける」ことを表現する儀式です。設計者が鎌(かま)を、施主が鍬(くわ)を、施工者が鋤(すき)を手に持ち、「エイ、エイ、エイ」という掛け声とともに、盛砂(土地を象徴している)を崩す動作を行います。

⑦玉串奉奠(たまぐしほうてん)

神様に玉串を捧げる儀式です。参加者全員が、順番に、玉串(榊に紙垂をつけたもの)を祭壇に供え、二礼二拍手一礼を行います。

⑧撤饌(てっせん)

お供え物を下げる儀式です。神職さんがお酒とお水の蓋を閉じ、お供え物を下げます。参加者は着席したままその様子を見守ります。

⑨昇神の儀(しょうじんのぎ)

神様に元の場所にお戻りしていただく儀式です。降神の義と同様、神職さんが「オオー」と唸るような声を出し、神様をお送りします。参加者は起立して頭を下げておきます。

⑩神酒拝戴(しんしゅはいたい)

神酒をいただく儀式です。神職さんの音頭のもと、神酒およびお供え物のお下がりを全員でいただきます。もちろん、飲めない事情のある方は実際に飲む必要はなく、形だけで全く問題ありません。

※大規模な建物の場合、仕出し弁当を配布するケースや、ホテルなどに移動して宴会を行うケースもあります。

以上が、地鎮祭の流れです。

地鎮祭にかかる時間は30分から40分程度です。準備や片付けを含めると1時間半から2時間程度が目安になります。

そして、この地鎮祭が終わった後は、ご挨拶回りです。

地鎮祭後にご挨拶回り

向こう三軒両隣(家の向かい側3軒と両隣2軒)の方に対して、建物を建てることやいずれ引越ししてくること、建物の建設中に騒音や車の出入りなどでご迷惑をかけてしまうことなどをお伝えします。

施工業者さんや工事関係者さんと一緒に回るのが一般的です。

ご挨拶の際、タオルや菓子などの粗品をお渡しできるとよいでしょう。工程表や現場監督さんの電話番号などを記載した書類も、必要に応じてお渡ししてください。

向こう三軒両隣以外にも、騒音や音の出入りなどでご迷惑がかかりそうなご近所さんがいれば、そちらにもご挨拶に回ります。

地域によっては、町内会の会長さんや同じ班の班長さんなどにご挨拶をした方がよいケースもあります。その地域の慣例に倣いましょう。

地鎮祭に必要なものとかかる費用

地鎮祭では、次のようなものが必要となります。

①お供え物
②会場設営の資材
③宴会の飲食費
④神職さんにお渡しする初穂料
⑤ご近所さんにお渡しする粗品

一般的に、「神職さんにお渡しする初穂料」は施主が用意します。それ以外は、施主が用意するか、施工業者さんが用意するか、ケースバイケースです。

一般的には、「お供え物」が施主、「お供え物」以外が施工業者さん、というパターンが多いです。事前に施工業者の担当者さんに確認しておきましょう。

①お供え物

地鎮祭では、祭壇を用意して、そこにお供え物をします。かかる費用は5000円から1万円程度です。

※お供え物は、「神饌(しんせん)」「御饌(みけ)」と呼ぶこともあります。

[お米]

お米を一合ほど用意します。水できれいに洗い、タオルやキッチンペーパーなどで水気をふき取り、乾かしておきます。

[お塩]

塩を一合ほど用意します。お供え物の他、敷地を清めるためにも使います。

[お水]

水を一合ほど用意します。普通の水道水でも特に問題はありません。

[お酒]

お酒は清酒(日本酒)を一升か二升用意します。蝶結びののしをつけ、のしの上段に「奉献」と記載し、下段に「施主の氏名」を記載します。

[海の幸]

尾頭付きの魚、するめ、昆布など、海の幸を3種類ほど用意します。メインは魚で、鯛を用意するのが一般的です。鯛を用意できない場合、他の魚で代用することも可能です。

[野の幸]

野の幸とは野菜のことです。トマトやナス、ホウレンソウなど地面の上になる野菜、およびダイコンやニンジン、ゴボウなど地面の下になる野菜、それぞれを2種類から3種類ほど用意します。

[山の幸]

山の幸とは果物のことです。リンゴ、ミカン、イチゴ、ブドウ、メロンなど果物を3種類から5種類ほど用意します。

②会場設営の資材

[青竹としめ縄]

青竹4本としめ縄を用意します。青竹を支柱にして、そこにしめ縄を張り巡らせることで、周囲との区切りにします(聖域を作ります)。

[祭壇]

祭壇を用意します。お供え物などを置くために使います。

[榊]

榊を5本用意します。祭壇に供えるために使います。

[半紙]

半紙を一帖(20枚)用意します。お供え物の下に敷くもの、しめ縄につける紙垂などとして使います。

[鎌・鍬・鋤と盛砂]

鎌・鍬・鋤とバケツ3倍程度の盛砂を用意します。全セクションでお伝えした「地鎮の儀」で使います。

[紅白幕・テント・椅子など]

紅白幕・テント・参加者人数に応じた椅子を用意します。必ずないといけないというものではありません。紅白幕・テント・椅子なしで地鎮祭を行うケースもあります。

[盃]

参加人数分の盃を用意します。全セクションでお伝えした「神酒拝戴」の際に使います。名前や日付などを入れるとよい記念品になります。紙コップで代用することも可能です。

③宴会の飲食費

宴会を行う場合、参加人数分の飲食費が必要となります。

④神職さんにお渡しする初穂料

「初穂料」とは、神職さんにお渡しする礼金のことです。

※礼金は、「御祈祷料」「玉串料」などとすることもあります。厳密に使い分けられているわけではありません。

初穂料の相場は、2万円から5万円程度です。神職さんによっては、金額が決まっているところもありますので、確認してください。

のし袋は、蝶結びのもの、中袋がついているものが一般的です。のしの上段に「御初穂料」と記載し、下段に「施主の氏名」を記載します。中袋には、表面中央に「金額」を記載し、裏面左側に「施主の住所と氏名」を記載します。

神職さんが車で来られる場合には、初穂料とは別に「お車代」を用意します。お車代の相場は5000円から1万円程度です。白色の封筒に入れ、封筒の表中央に「お車代」と記載します。

⑤ご近所さんにお渡しする粗品

地鎮祭の跡、ご近所さんにご挨拶回りをする場合は、粗品が必要となります。500円から2000円程度のタオルやお菓子などが一般的です。蝶結びののしをつけ、のしの上段に「粗品」あるいは「ご挨拶」と記載し、下段に「施主の名前」を記載します。

地鎮祭に必要となるものは以上です。

これらの手配について、行き違いが発生しないよう、あらかじめ、「誰が何を用意するのか」を関係者間で確認をとっておきましょう。

また、施工業者さんによっては、施工費用にこの地鎮祭分の費用が含まれていることがありますので、こちらについても確認をとっておきましょう。

地鎮祭の服装

地鎮祭では、参加者の服装についての決まりは特にありません。

男女ともにスーツ(学生の場合は学生服)であれば、問題ありません。

個人の住宅の場合には、カジュアルな服装というケースもあります。極端に派手な服装やだらしのない服装でなければ、普段の服装で問題ありません。

「この服装で大丈夫かな」などといった不安があれば、施工業者さんに確認してください。

夏であれば汗でビショビショになる、冬であれば寒さで震えるてしまう、といったこともありえます。体調を崩さないよう、天候た気候にあわせた無理のない服装で参加しましょう。

なお、地鎮祭は通常、土の上で行うものですので、前日に雨が降っている場合などでは、土がぬかるんでいることもあります。適宜、着替えや予備の靴を用意してください。

地鎮祭に関連した行事

地鎮祭と同じく、建物を建てる際に行う行事として、「上棟式(じょうとうしき)」「竣工式(しゅんこうしき)」と呼ばれる行事もあります。

上棟式

建物が棟上げ(建物の骨組みの完成)まで進んだ際に行う行事で、その段階まで到達できたことに感謝するため、および建物が無事に完成することを祈願するために行います。

竣工式

建物が完成した際に行う行事で、建物が無事に完成したことに感謝し、祝うために行います。

地鎮祭と同様、上棟式も竣工式も、行うことが義務として決まっているわけではありません。施工業者さんや身内の方などと相談しながら判断してください。

地鎮祭のポイントまとめ

地鎮祭の目的、行うこと、用意するもの、服装、注意点などを解説してきました。

ポイントをおさらいしておきましょう。

・地鎮祭は工事の安全と家の繁栄を祈願するために行う
・主催するのは施工業者さん
・日程は「六曜」や「十二直」における吉日を参考にして決める
・流れ:修祓の儀⇒降神の儀⇒献饌⇒祝詞奏上⇒四方祓⇒地鎮の儀⇒玉串奉奠⇒撤饌⇒昇神の儀⇒神酒拝戴
・所要時間は30分から40分程度(準備や片付けを含めると1時間半から2時間程度)
・地鎮祭の後は向こう三軒両隣の方に対してご挨拶周り
・用意するものは「お供え物」「会場設営の資材」「宴会の飲食費」「初穂料」「粗品」などで、施工業者さんが用意してくれるものもある
・服装についての決まりは特にないが、派手な服装やだらしのない服装は避ける
・他にも建物を建てる際に行う行事として「上棟式」や「竣工式」がある

※施工業者さんや依頼する神職さん、地域によっては、進め方やしきたりに差異があることも十分にあります。

地鎮祭は、多くの人にとって、人生で一度経験するかしないかの行事です。初めての経験から、不安になってしまったり手間取ってしまったりすることもあるかもしれません。思い出になるようなよい地鎮祭が行えるよう、ぜひこの記事を参考にしてください。